令和元年10月12日(土)、台風19号が日本列島に上陸。暴風や大雨により各地に大きな被害をもたらしました。
多摩地域では、あきる野市や奥多摩町など西多摩エリアでの被害が甚大で、被害発生から2ヶ月が経とうとする現在でも、いまだに通行止めの箇所が多々あります。
奥多摩町「日原街道」は道路の一部が崩落し、日原地域へは通行止めに。報道も少なくなり、心配されている方も多いかと思います。
現在はどのような状況なのか?2019年11月末、奥多摩町職員の方の許可を得て、崩落現場を取材してきました。
日原街道の通行止め箇所と崩落箇所
日原街道は奥多摩町氷川の甲州街道の日原街道入口交差点から、日原川の急峻な渓谷に沿って標高差300mを上り、奥多摩町日原に至る延長9kmの1~2車線の山岳都道です。
1車線で狭い部分が多く、度々、崩落や落石が生じている箇所です。
通行止め区間
日原街道の通行止め区間は、奥多摩町氷川「根元神社」北から日原終点までの約10.0kmです。
崩落箇所
崩落箇所は日原川を渡る「平石橋(ひらいしばし)」と「白妙橋(しろたえばし)」という吊橋がかかる地点の中間あたりです。
日原街道は日原地区や日原鍾乳洞に車でアクセスできる唯一の道路のため、町民にとって生活が不便になるばかりでなく、鍾乳洞などの観光事業にも多大な影響をもたらしてしまうのです。
「日原街道」崩落現場の現状
奥多摩駅方面から都道204号「日原街道」を車で向かいます。途中、「この先平石橋付近斜面崩落通行止め」の標識があり、通行止めの注意喚起をしておりました。
通行止め区間は日原地区住民か関係者以外立ち入り禁止となっています。向かってもUターンを促されますので近づかないようにしましょう。
日原川にかかる「平石橋」付近の駐車場に停めて歩いていきます。
「平石橋」すぐ近くにある渓流管理釣り場「東京トラウトカントリー」は営業停止しておりましたが、公式サイトによると、11月27日(水)より「事前予約制」のみ受付再開となりました。
ロッククライミングができる石灰岩は、ゴロゴロと横倒しに。自然の脅威を感じます。
ここから先が崩落現場です。物資を運ぶための黒いロープが張られ、ショベルカーが見えます。
ショベルカーで取り外したガードレールを持ち上げているようでした。
10月21日に地元住民や工事関係者用の仮設通路が設けられました。
通行は1名まで、自転車・バイクは通行禁止、手荷物もポリ缶2個(約40kg)程度までと通行に制限が設けられていました。
道幅は両手を広げられないほど狭く、鉄板の上を歩いていきます。
ここがちょうど崩落現場の真上です。進めば進むほど道幅がどんどん狭くなっていきました。
参照:奥多摩町被害状況資料
10月14日(月)、台風通過から2日経過したときの現場写真です。道の一部が完全に崩れ落ちています。
こちらが小池都知事が偵察に来ていた崩落現場です。想像を絶する被害状況に言葉も出ませんでした。
崩落により、日原街道に埋設されていた導水管が断裂。源水を浄水所へと送れなくなったため、氷川地区から古里地区で断水が発生しました。
応急給水車による給水が行われていましたが、 18日までに仮設の導水管が設置されました。
水面が道路まで到達した結果崩れたのかと思っていましたが、実際は道路下の土砂が大量の雨水で押し流されていき、支えきれなくなって崩壊してしまったそうです。
崩落した箇所はすでにコンクリートが流し込まれており、これ以上崩落しない処置が施されていました。
現場ではショベルカーで土砂を掘り起こしていました。
ショベルカーのそばの清流はこんなにも透き通っており、川沿いの紅葉がとてもキレイで、なんともやりきれない気持ちになりました。
崩落現場復旧まで約3年の月日がかかる見込み
実際に崩落現場を目の当たりにしてみて、かなり深い部分まで崩落していることがわかりました。
テレビで見るよりもかなり広範囲にえぐれており、いかに台風19号の威力が凄まじかったのかと思い知らされました。
職員の方の話によると、崩落現場が復旧するまで約3年という月日がかかる見込みだそう。
生活を今までと同じように戻し、車が通れるようにするためには、この場所を復旧する必要があります。日原鍾乳洞へ安全に通れるようになり、再び元気を取り戻してほしいです。
奥多摩町の観光地は日原鍾乳洞も有名ですが、奥多摩湖の景観もすばらしいです。一度ぐるりと回られてみてくださいね。
「奥多摩水と緑のふれあい館」内のレストランで、ダムそっくりな「小河内ダムカレー」もありますよ。
奥多摩湖畔にある「小河内ダムカレー」を食べてきた。山と湖を見ながら食事が楽しめる
現場で復旧にあたる皆さまのご安全を祈念するとともに、町民の方の安らぎも同時に戻ることを祈るばかりです。
4月25日追記:仮設道路が通行可能に。およそ7か月ぶりに孤立解消へ
2020年5月7日から仮設道路が通行できるようになり、およそ7ヶ月ぶりに孤立が解消されることになりました。
およそ40世帯70人が孤立した状態になっていましたが、仮設の道路が完成し、5月7日の午前10時に通行止めが解除される見通しになったということです。
仮設の道路のため、片側の交互通行で大型バスなどは通れませんが、台風からおよそ7か月ぶりに地区の孤立は解消されることになります。
ただ地区にある日原鍾乳洞などの観光施設は休業が続いているほか、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、町では観光での訪問は自粛してほしいと呼びかけています。
東京都は崩落現場の本格的な復旧工事を進め、年内には完全復旧させる方針とのことです。